
令和8年4月1日より、土地や建物(これらを「不動産」といいます)の所有者として登記されている人や法人について、住所や氏名(法人については本店や商号)に変更があった場合、変更した日から2年以内に、変更登記(以下「住所・氏名変更登記」といいます)の申請が義務となりました。
正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料が科されます。
住所・氏名変更登記が義務となった理由
現時点においては、不動産の所有者に住所や氏名(法人については本店や商号)の変更があった場合、住所・氏名変更登記の申請は任意となっています。つまり、登記を行うのも行わないのも自由です。
その一方で、近年においては、土地の所有者が分からない「所有者不明土地」や、建物についての「空き家」が社会問題となっています。
また、所有者が分かってもその所在が分からないため、所有者に連絡がつかない場合もあります。
これらの問題の大きな原因の一つとして、不動産の所有者が亡くなったにもかかわらず、名義変更(相続登記)が行われていないことや、住所・氏名変更登記が行われていないことが挙げられています。
そこで、この問題を解決する方策の一つとして、住所・氏名変更登記の申請が義務となったのです。(なお、相続登記の申請の義務化についてはこちら)
義務化が開始される前に住所や氏名(法人については本店や商号)に変更が生じていた場合
住所・氏名変更登記の申請の義務化が開始される日(令和8年4月1日)より前に変更が生じていた場合においても、義務は発生します。
この場合は、令和10年3月31日までに住所・氏名変更登記の申請を行う必要があります。
何年も前に住所や氏名(法人については本店や商号)を変更したものの、住所・氏名変更登記がなされていない場合はご注意下さい。
「スマート変更登記」制度について
不動産の所有者は、住所や氏名(法人については本店や商号)に変更があった場合、自ら住所・氏名変更登記の申請を行わなければなりません。
住所や本店を何度も変更している方については、その都度、住所・氏名変更登記の申請を行わなければならず、また、義務違反については過料が科されるため、所有者に対する負担は軽くありません。
そこで、所有者に対する負担軽減のため、所有者が自ら住所・氏名変更登記の申請をしなくても、法務局の登記官が、職権で住所・氏名変更登記を行う制度(「スマート変更登記」といいます)が設けられました。詳しくはこちら
過料について
すでに申し上げたとおり、正当な理由がないのに住所・氏名変更登記の申請を怠ったときは、5万円以下の過料が科されます。
過料が科されるまでの手順は以下のとおりです。
1
法務局の登記官が住所・氏名変更登記の申請義務違反を把握
2
義務を行うよう所有者に通知書を送付(「催告」といいます)
3
催告を受けた所有者が、正当な理由なく、期限内に住所・氏名変更登記の申請又は申し出(個人については「検索用情報」、法人については「会社法人等番号」)を行わない
4
登記官が裁判所に過料を科すよう通知を行う
5
裁判所の判断により、所有者に対し過料が科される
「正当な理由」に該当する例として、以下のものが挙げられています。
- 「検索用情報」の申出又は「会社法人等番号」の登記がされているが、登記官の職権による住所・氏名変更登記の手続がされていない場合
- 行政区画の変更等により所有者の住所に変更があった場合
- 義務を負う所有者に重病等の事情がある場合
- 義務を負う所有者がDV被害者等であり、生命・身体に危害が及ぶおそれがあり避難を余儀なくされている場合
- 義務を負う所有者が経済的に困っているため、住所・氏名変更登記にかかる費用を支出できない場合